白岡市大山地区に伝わる親孝行な息子のユーモラスな民話のひとつで、素朴で一途な人々の「心」を表しています。
昔ある所に、親孝行の息子がいた。長い間、病気の母が「団子が食べたいから買ってきておくれ」と息子に頼んだ。
息子は忘れないように「団子、団子」と言いながら行ったが、堀を飛び越えたら「いっとこさ」になってしまった。
お店で「いっとこさを下さいな」と言ったら、「そんなの無いよ」と言われてしまった。
帰りにまた堀を飛び越そうとしたら、転んで団子のような大きなコブができた。
家に帰って母に「いっとこさは無かったよ」と言うと、「おまえ、団子のようなコブを作ってどうしたんだい」と聞かれ、やっと団子を思い出した。
今度は「団子が無ければ、めんでもいいよ」と頼んだ。
お店に行って、めん(うどん)を一生懸命さがしたらようやく見つかった。
しかし、めんはめんでも顔につける鬼の面だった。
息子は、二度も道を往復したので疲れ、道ばたで眠ってしまった。
その時、近くで山賊たちがバクチを打っているとも知らず、目を覚ましておもむろに「ウォー」とうなり声をあげた。
山賊はおどろき、お金を置いて逃げてしまった。
息子はお金を拾い、勇んで母に持って行くと、母はびっくりして病気が治ってしまったとさ。
終
(白岡市史民俗編より引用)